下肢

大腿骨頚部骨折

日本における寝たきり老人の理由としてNo.2を占めています。
ほとんどの場合手術治療が適応となりますが、合併症などでリハビリが十分にできないと手術を行っても歩行能力が失われることが多いのです。
高齢化により急激に増えており、社会問題化されてきています。
お年を召した骨粗しょう症の方が転んだ直後に足の付け根を痛がって立てないときはほとんどこれです。ギプスや安静による治療は長期間にいたるためにほぼ確実に歩行能力がなくなるため、すでに歩行不能な患者さん以外ではほとんど不可能であり、ほぼ全てのかたに手術治療が適応となるといっていいでしょう。
人工骨頭置換や骨接合術などが骨折した場所によって選ばれます。手術の時期が遅れればそれだけ歩行能力を再び獲得することは難しいため早期の手術が望まれますが、もともと心疾患や脳血管障害などで抗凝固剤(血液を固まりにくくする薬)を内服している場合には手術の危険が高くなり待機しなければいけないこともあります。
重要なことは歩行能力がかなりの患者さんで低下するということです。もともとの歩行能力が高いかたでも高齢者に多い手術合併症(せん妄・感染・肺炎・心不全や廃用症候群)がいったん起きれば歩行不能となってしまうかたもあります。


変形性膝関節症

整形外科の外来で最も多いといってもいいでしょう。全国で約700万人がこの状態であるとされています。女性が男性の2倍多く、50台後半の女性からときどき起こります。年をとることや筋力低下、肥満などのきっかけにより膝関節のクッションの役目を果たす軟骨や半月板が長期間に少しずつすり減り変形することで起こるのがほとんどですが、関節リウマチや過去の膝の怪我などによって引き起こされるものもあります。程度によっては症状もさまざまで、初期には階段昇降や正座やしゃがむ姿勢が痛くなったりします。初期にはくすり・サポーターなどの装具、リハビリなどで症状が落ち着く方もみえますが、来院されたときに痛みが強い場合にはしばらく数回続けてヒアルロン酸の関節内注射を行います。このような治療とともに生活習慣の見直しを行いそれでも日常生活に差し支えるような症状が残った場合にのみ手術は考慮します。
よくいわれる「水が溜まる」とは炎症で関節液が余分になった状態で、もともと適正量は関節の潤滑剤として存在します。 「水を抜くと癖になる」と言うのは大きな間違いで、関節液の溜まりすぎることは痛みや関節の動きの制限となるだけでなく、関節軟骨への栄養が途絶えてしまうことになります。
抜かなくても炎症が続けば「水がたまる」は続きますので、やはり整形外科で適切に処置したほうが長期的にみてもいいでしょう。
多くはありませんが、治療に全く反応せず下肢に体重をかけられないくらい痛い状態が続くようだと、大腿骨内顆骨壊死という病気があります。これは単純X線では診断がつかずにMRIが必要になる場合もあります。


膝内障

膝内障は多くの場合骨の損傷を認めず、疼痛の部位が完全に特定できない場合に便宜的に用いられる病名です。このなかに半月板損傷や前十字靱帯損傷、関節軟骨損傷などを含んでいる場合もありますが、自然経過で改善するものもあります。
半月板は膝関節のなかにある組織で内側と外側に1つずつあって、上からみると8の字のようになっています。体重による負担をやわらげたり、膝の動きをスムーズにするクッションの役割があります。年齢によりだんだん擦り切れてきたりする場合は壮年期以降に多く、変形性膝関節症の原因にもなります。

半月板損傷

半月板は膝関節のなかにある組織で内側と外側に1つずつあって、上からみると8の字のようになっています。体重による負担をやわらげたり、膝の動きをスムーズにするクッションの役割があります。年齢によりだんだん擦り切れてきたりする場合は壮年期以降に多く、変形性膝関節症の原因にもなります。 若い方でもスポーツや大きい負荷で膝が曲がった状態でひねりが加わったり、そこから急に伸ばすなどの動作で半月板損傷が起きることがあります。損傷の程度によって症状には差があり、「膝がひっかかる感じ」だけのときもありますが「ぴんとのびない」とか階段や平地でのいたみ、しゃがみこみでの痛みや音がしたりすることもあります。繰り返すと関節液が溜まることもあります。傷んだクッション自体がまくれ込んだり挟まりこむと強い症状を起こすこともあります。外傷後に起きた場合には以下に書くような靭帯損傷も同時に起きていることが多く、損傷の度合いによっては手術が必要な場合もあります。
診断は徒手テストという診察でもある程度のものは判断できますが、小さなものまでは特定できないため、正確な診断にはMRIが必要になることも多いのですが、MRIも万能ではないため治療もかねて関節鏡が必要になる場合もあります。
当院では関節鏡検査・治療ができないため、疑わしい場合には関節鏡の経験豊富な病院によくお願いしています

前十字靱帯損傷

ひざのぐらつきをしないようにする強い靭帯が前十字靱帯です。靱帯断裂は転倒や交通事故などで起き、ほとんどの場合初期に関節のなかに血液がたまります。半月板損傷などを伴っていない場合には痛みは結構なくなるため、その後に病院に受診していない人もいます。もちろんこの状態でも通常に歩行は出来ますが、階段を下りるときにガクッとなったりすることが出てきます。装具を装着すれば軽いスポーツも可能になりますが、本格的な復帰は難しくなります。高いレベルの生活が必要な場合には膝関節鏡での靭帯再建手術を行うこととなります。

足関節のねんざ・骨折

一般に足関節は内反(内ひねり)の方がしやすいため、捻挫は外くるぶしに多く起こります。引き伸ばされて軽度の断裂のみの場合は「ねんざ」となり、靭帯が完全に切れている場合は「靱帯損傷・断裂」という病名になります。注意すべきなのは骨折が起きていても往々にして症状だけでは見分けがつかないので、ねんざだけだと思わずX線写真をチェックしたほうがベターです。足首の骨折や靱帯損傷は関節の中の骨折がほとんどのため、治療が遅れたりリハビリがしっかり出来ないと動きの制限が後遺症になりやすいのです。またときどき第五中足骨基部骨折という足の外側の骨折を起こしていることもあります。

アキレス腱断裂・腓腹筋断裂

剣道で足を踏み込んだとき、ダッシュの一足目にブチっと音がして足首が痛くて上に向けられない、つま先立ちが出来ないときにはこれらであることが多いです。筋肉の部分だと筋断裂、腱の部分だとアキレス腱断裂になります。
筋断裂はギプス治療、アキレス腱断裂の場合切れた部位や患者さんの活動性(スポーツや余暇活動を今後するかどうか)によって手術かギプスかを検討します。
どちらの治療であっても足首を下げた状態で固定を数週間行う必要があるため、足関節の上向きが固くなります。適切にリハビリが出来ないと固さ(拘縮)が残り、しゃがみこみなどが困難になる場合があります。


足部の障害(外反母趾・扁平足など)
*dr-machida.comより一部引用

扁平足

体重をかけた状態で土踏まずがなくなっている、足全体が平べったくなった状態です。踵の骨折などの後に発生するものもありますが、多くははっきりした原因がありません。扁平足の人は大変に多いのですが扁平足で困っている人は極めて稀で、むしろ扁平になって足全体が開く(開帳足)ことにより、以下に述べるような外反母趾や巻き爪でお困りになることが多いようです。

外反母趾

足の親ゆびがそのつけ根で外側(小指側)に曲り、そして前足部が内側に突出した変形です。足のゆびの最も多い変形で女性に多くみられます。痛くもなんともない人も多いのですが、突出した部分に炎症を起こすと痛みを生じます。
とりあえず痛みに対してパットを挿入したりされることも多いですしそれで何とかなっているかたもみえますが、原因は開帳足といって上記の扁平足傾向に原因があるのが多いのです。内反小趾(小指が付け根で親指側にまがっていること)を合併しているかたが多いのもそのためです。
やはり足自体を正確にサポートするような靴底の作成で進行を予防したり、症状を抑える事ができます。当院では靴・足底板作成を得意とする義肢装具士が来院し、靴・装具チェックを毎週水曜日17~19時に行っていますので、ご相談ください。 その際にはいつも履いている靴を持参していただけるとより効果的です。
靴の選び方;http://tama-medical.com/dr-m/j_shoes_fitting.html

陥入爪

陥入爪は爪の角がトゲのように軟部組織(肉)に刺さって炎症を起こした状態を呼びます。巻き爪は爪が横方向に巻いている状態を呼びます。陥入爪の人は巻き爪になっている事が多く、爪の角を切ると一時的に痛みはなくなりますが、爪が伸びたときに、さらに巻き込み、より重症な陥入爪になります。
原因は3つ、深爪、足に合わない靴、ぶつけた場合です。特に深爪が主な原因です。深爪をすると歩いた時に床からの力で軟部組織が爪の縁から持ち上げられ、その軟部組織が爪を押して巻き爪になります。また、靴下が切れてしまうので爪の角を切って深爪にしてしまう人もいます。爪をぶつけると爪の縁の軟部組織が腫れて持ち上がり、爪を押すので巻き爪になります。 靴も原因の一つです。ハイヒールなどのトゥー・ボックスの狭い靴を履くと爪が押されるので深爪をしがちになります。逆に大き過ぎる靴も巻き爪の原因になります。例えば長靴は靴の中で足が動きすぎるので、爪が押されます。先の丸い紐靴をお奨めします。
治療には一昔前までは手術治療や抜爪が行われていましたが、現在では切らない治療が行われつつあります。
当院で行っている巻き爪のワイヤー治療は残念ながら使用する材料が健康保険で認められておらず、現行の法令では自費診療となります。当院でも水曜日午後に予約制で行っていますので、ご希望の方はお電話でご予約ください。 価格の目安や行っている医療機関は多摩メディカルのホームページに記載されています。